カラスヤサトシ「おのぼり物語」 | イラストレーターleolio 『歩こうの会 おざな(Ozana)』

カラスヤサトシ「おのぼり物語」


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カラスヤサトシ氏の「おのぼり物語」を読んだ。

レビューするまでもなしに名作じゃないですか!?

今年一番ですよ。


共感できるところがあり過ぎです。



かく云う私も5年前くらいに東京に出てきた者だ。

イラストレーター目指して、いざ魔都の東京へ。


カラスヤサトシ氏は大阪の枚方からの上京、わたしも前まで枚方市に住んでいた。その後、京都に移り住んだので、京都からの東の都へのおのぼりさん。


関西にいるときは、大阪など都会だなと思っていたけど、東京のそれと比べたら比べるもの憚れるほど東京の方が何もかも大きい。大きすぎるし広すぎる。



作中にて神保町に訪れて、その古本街ぶりの広大さに「大阪で書店街といえば梅田のかっぱ横丁か」と、カラスヤ氏がふと回帰した後に、「神田は"古本の街"いうより もう"古本の星"であった」とおっしゃられているように、神田と梅田のかっぱ横丁とでは規模が違い過ぎ。

そして私にとっても神田は大好きな街です。あの星の住民になりたい。


また道の難解さを大阪と比べるなら、作中の説明にある大阪市街の道はたいてい碁盤の目にようになっているけど、東京は江戸城( 今ないよ )を中心に放射状に道が広がっている上に、さらに環状線や碁盤の目の道が重なっていて非常に分かりづらい。

電車も難解過ぎる。




東京に来たときの疎外感、心のより所のない感じ、でもどこか東京に出てきたっていう浮き足立つような昂揚する想いなど全てこの本に詰め込まれている。




シンクロするところはいろいろあるんだけど、私もカラスヤ氏と同じように何のツテがあるでなしに東京に出てきて、いざ不動産屋に行けば作中にあるように「無職が来た」というのが不動産屋の対応。

サラリーマンなら、もうとっくに部屋を案内されている頃なのに、新しい部屋も見付からず夜を迎えるカラスヤ氏。

分かる、分かる、WA★KA★RU。



はあ。



東京の天気予報を見て、東京にいることを実感したり、一人で架空の相手に向かってしゃべっていたり・・・



はあ。



何よりね、家族が癌になるところ。

作中では、氏が上京してから父親が肺ガンにかかり、脳にまで移転するのだが、ここ見たとき「うわ!」言ってもうた。

私の場合は、母親なんだけど、同じく肺ガンから脳に移転で寝たきり。


どないやねん。


作中にあるように、

医者とご家族だけで面談もした。

知らない人にも怒鳴った(作中では電車の乗務員、私は警備員。同じように止められてね)。

キノコとかにも頼った(アガリクスなんか効くもんか )。

掛けるべき声が出ないときもあった。

それなのに病人がまたホロッと泣かせることを言ってきたりする。



私はそれらにある程度決着が着いてからの東京生活だったけど、氏はそんな胸中にも仕事をこなしていたんだから偉い。気が気じゃなかったと思う。

上京生活を中止して大阪に帰ることも考えたのも作中で伺える。



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今までの作品も氏の独特な世界感を掘り下げてていいけど、この作品はなんだか他人事じゃないです。

作中で親にちくりちくり言われるセリフとかね( 笑 )


この作品には心中を察するというか、よく分かるってところが多すぎる。



ここもいい。


「仕事で出会う人も

マンガを通して出会う人も増えた


"マンガがあかんなったら今まわりにいる人たちは・・・・

みんなおらんなるんやろーな"


しかしそういう寂しさや恐ろしさは

上京してきて何かをしようとしている人間は

おそらく全て味わっているものだろう。」




誰か他人がいるからこそ、自分という存在を認知するのが人間か。

必要とされなくなったそこで存在というものは無くなってしまうのか。

実際東京自体には、”必ず”なつながりがない。

将門の首塚を守らなきゃって用もない。


自分から存在をアピールするのは勇気がいるものだ。

それでも何かしらの想いを持って東京へ出てくる人間は、"自分"という"個"の色が濃いい人間だと思う、

結果が失敗だろうと、成功だろうと、その"人"という人間は同じ人は二人といない。

絶対それだけ自分を信じて上京するからには、"その他"に埋もれない何かを見付けることが出来るはずだよ。


東京に出てきた人たちが偉いとは一概に言えないけどさ、だって家が五代続く酒造を営んでいるというお宅だってあるはずだ。

綺麗な水があるところから離れることが出来ないし、後を継ぐ人間が自分しかいないという方もいる。

もしくは私のように、親の世話をする人間が自分しかいないという人だっている。


それもよーく分かる、歯がゆい想いをしておられる人だってたくさんいるはずだ。

次男だけ東京行きやがってって人も。


はあ、東京に来て、東京に結果的に家賃を払っている(大家の収益だっていずれ都の税金さ)人は、もう東京の人だよ。江戸っ子とかは全く関係ない。"田舎者の集まり”と称する人ほど、根っからの田舎者だったりするし。


東京に来てる同志、東京という街を構築しつつも、いいとこ取りが出来たらいいね。




最終ページ、「東京へきてよかったですか?」とたまに聞かれるカラスヤ氏。


「そんな時はいつも 

 あほみたいな顔で


 ようわかりまへん


 と答える  」


「これはまったく本音であって


自然とあほづらになってしまう


東京へきて何かが変わるのか

なにも変わらないのか知らないが


それでも人は次から次へと何かをなしに東京へやってくる  」




私の場合は、東京へ来て大バンザイって感じです。

後10年後は分からないけどね、一人っ子なんで親の介護問題とかあるだろう。

かといって田舎に帰ったから、サラリーマンの息子だし、継ぐような店がある家でもない。




それでも東京へ"出た""出てない"という人間には差があると思う。

何かしら想いを持って東京へ出た場合に限るけど。


華やかさを求めるのなら、地方の中堅都市で十分。


"アド街""ちぃ散歩"で紹介した場所には電車で行けるけどね。




東京に来てるのは、言えば長い旅。

人生は旅だぜ。



でも、実際"作業"的なことをしているときは東京じゃなくてもいい気がする。

月の半分を他県で、半分東京でもやっていけそうだけど交通費かかるだあね。



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